今はもう、手に入れにくい寅さんのトランク
訪ねたのは、浅草橋にあるレトロなビルの一角。このあたりは、玩具、人形、文具、店飾などの問屋街として発展したものづくりの街として名が知られています。そんなお店が並ぶ「江戸通り」沿いに、ワンズワードはあります。
——このあたりは、ものづくりの街なんですね。隣には、「ハンドバッグ会館」があり、まさに!という感じです。
山上 そうですね。カバンだけでなく、財布など、ものづくりに携わっている企業が沢山集まっている街なんです。
——本日、初めて実際のトランクを見るのですが、想像以上に大きいです! ここに沢山いろんなものを詰め込みたくなります。
山上 横670mm×縦400mm×高さ185mmありますからね。かなり大きいです。ブルーレイ49本とそのほかにも沢山の豪華特典が全て入る大きさになっています。スーツケースより一回り小さいぐらいかな。
——このぐらい大きなトランクケースって、最近はあまり見かけないですよね。
山上 あまりないと思います。国内でこのぐらい大きなトランクケースを作っている会社はあまりないですし、販売もされていないと思います。
——販売されているのを見かけなくなりました。それだけ手に入れにくいカバンということですか。
山上 昔は旅行鞄として需要があったので、結構作られていたんです。でも、今は、旅行鞄の主流はキャリーケースに代わってしまいましたね。実は、前回40周年で作られたトランクケースも見本としていただいたのですが、この10年でカバン業界も様変わりしてまして。このぐらい大きいハンドバックを作ることができる工場は、とても限られています。
——トレンドとともに、製作できる職人も減ってしまったと。
山上 はい。一方で、この10年、生地や縫製方法のクオリティは、各段に上がっています。
——詳しく教えてください!
山上 まず、生地です。合皮を使用していますが、この10年間で素材の質が格段によくなっています。とても丈夫になりました。今回は、傷がつきにくい素材を厳選し、鞄としての強度も上がっています。薄くて貼りやすい生地なので綺麗に仕上げることができるのですが、やぶれにくいんです。選べる皮の種類も遥かに多くなったので、寅さんが持っているトランクにより近いイメージに仕上げることができたと思います。
——実際に撮影に使用したトランクも、参考にしたのでしょうか?
山上 はい。撮影で実際に使われていた2種類のトランクを拝見させていただきました。撮影時期によって、それぞれ少しずつ違うんです。
——「葛飾柴又寅さん記念館」には、撮影で使われた寅さんのトランクが展示されています。展示では、トランクの中に入っているものも見ることができますよね。映画の小道具さんが、1点ずつセレクトしているんだそうです。
山上 あとは、鍵部分の金具ですね。最新基準の鍵を使用しているのですが、「男はつらいよ」の世界観を踏襲するために、本来あった鍵の認証ロゴはわざと消すよう手を加えました。
——世界観を楽しんでいただくために、わざわざ消しているんですね!
山上 取っ手も「飾り」で付いているのではなく、きちんと中に物をいれても持てるように強度を増した設計にしています。全ての点において、「長く愛用していただけるトランクです」と自信を持って言えます。それだけ、時間をかけてこだわって作りましたから。
——どのくらいの期間をかけて作られたのですか?
山上 通常は、依頼があってから商品を納品するまでに、3〜4ヶ月を要するのですが、こちらのトランクは、去年の11月から始まったプロジェクトで、すでに半年が立っていますが、まだ修正段階です(笑)。試作品をつくっては、修正を重ねに重ねて、実はこれで4回目の調整中になります。トランクの内側の仕様だけで、2ヶ月間かけていますから、それだけで相当なこだわりなんです。
——それだけこだわって時間をかけていると。
山上 しかも、こだわっているのは、トランク本体だけではなくて、お届けする際に梱包する箱もすごいです。 これは弊社が手がけている訳ではありませんが、ここまでこだわった梱包を今まで見たことがありません(笑)。
——梱包も、特別なんですね(笑)。
山上 何重にも厳重に梱包されています。とてもこだわり抜かれたものが沢山詰まった“寅んく”だから、やはり大切にそれをお客様の元に届けたいという思いを感じますよね。
山上 これがお客様の手元に届いた時は、もう「ドーン!」という感じで、トランクを開けると、中身もぎっちり詰まっていて、必ずや喜んでいただけると思います。
——“寅んく”という宝箱に収められた、宝物が届くような感じですね。
山上 ブルーレイはもちろんですが、トランクもその他の特典もこだわり抜かれたものばかりなので、「大人の宝物」と言ってもいいのではないでしょうか。この大きさで、このつくりのカバン自体の生産が、今後できない可能性もありますから、そういう意味でも貴重だと思います。
——このトランクを長く愛用するためのコツなどは、ありますでしょうか。
山上 生地は水を弾くものを使用していますので、お手入れする際には水拭きしていただいて構いません。逆に、油剤を使用してしまうと表面のコーティングが剥がれる可能性があるので、気をつけてください。
また、大事に使いたいということで、梱包されたまま収納してしまうとカビが生えたり、金属パーツに青サビが出てしまったりすることがあるので、できれば梱包材から出して、または、たまにその中から出して風を通すなどして、愛用していただければなと思います。
——山上さんありがとうございました。こだわり抜かれたトランクだということで、期待が高まりました。 先日、「4Kデジタル修復」版ブルーレイの担当者にも取材をしたのですが、負けないくらい思いがつまったものでした。多くのファンの方に「男はつらいよ」の世界を届けられたらと思います。
今回、ご紹介した復刻“寅んく”は、2019年12月25日(水)に発売されます!「男はつらいよ」の世界観を味わえるこだわりのトランクとともに、是非自宅でお楽しみください!!
写真:北原 千恵美